大判例

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千葉家庭裁判所松戸支部 平成元年(少イ)1号

主文

被告人を罰金40万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(認定事実)

被告人は、千葉県柏市柏6丁目2番11号のビルトモアB棟205号室において、コンパニオンクラブ「バンケットあやめ」を経営している者であるが、

第一  A子(昭和45年12月21日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、昭和63年11月26日、千葉県柏市○○××番地の××の寿司店「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、

第二  B子(昭和46年4月1日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、昭和63年12月21日、同県野田市○○××番地の料理店「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、

第三  C子(昭和47年3月2日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、昭和63年12月23日、同県柏市○○×番××号の料理店「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、

第四  E子(昭和46年2月23日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、昭和63年12月28日、同県野田市○○××番地の割烹旅館「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、

第五  F子(昭和47年2月3日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、平成元年2月17日、同県松戸市○○×丁目××番地の寿司店「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、

第六  G子(昭和46年8月9日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、平成元年3月18日、同県野田市○○××番地×の料理店「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、

第七  N子(昭和47年2月23日生)の年齢が満18歳に満たないかもしれないことを知りながら、平成元年4月21日、同県柏市○×丁目×番×号の○○こと「○○」宴会場に、あえて同女をコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせ、もって、満18歳に満たない者らをそれぞれ酒席に待する業務に就かせたものである。

(証拠)

判示事実全部について

一  被告人の検察官(4通)及び司法警察員(8通)に対する各供述調書

判示第一の事実について

一  第六回公判調書中の証人A子の供述部分

一  Hの司法警察員に対する供述調書

一  司法警察員作成のA子の写真撮影報告書(平成元年10月4日撮影)

一  東京都新宿区長作成のA子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

判示第二の事実について

一  第三回公判調書中の証人B子の供述部分

一  Iの司法警察員に対する供述調書2通

一  司法警察員作成のB子の写真撮影報告書(平成元年4月11日撮影)

一  東京都東村山市長作成のB子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

一  押収してあるB子外4名の写真1枚(平成2年押第33号の1)

判示第三の事実について

一  C子の検察官に対する供述調書

一  Jの司法警察員に対する供述調書2通

一  司法警察員作成のC子の写真撮影報告書(平成元年10月4日撮影)

一  岩手県江刺市長作成のC子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

判示第四の事実について

一  E子の検察官に対する供述調書

一  Kの司法警察員に対する供述調書

一  司法警察員作成のE子、G子の写真撮影報告書(いずれも平成元年9月29日撮影)

一  千葉県松戸市長作成のE子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

一  押収してあるE子外1名の写真1枚(平成2年押第33号の2)

判示第五の事実について

一  F子の検察官に対する供述調書

一  L子の司法警察員に対する供述調書

一  司法警察員作成のF子の写真撮影報告書(平成元年10月4日撮影)

一  千葉県柏市長作成のF子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

判示第六の事実について

一  G子の検察官に対する供述調書

一  M子の司法警察員に対する供述調書

一  司法警察員作成のE子、G子の写真撮影報告書(いずれも平成元年9月29日撮影)

一  愛媛県新居浜市長作成のG子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

判示第七の事実について

一  N子の検察官に対する供述調書

一  司法警察員作成の平成元年10月5日付け捜査報告書

一  司法警察員作成のN子の写真撮影報告書(平成元年10月4日撮影)

一  東京都台東区長作成のN子の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し

なお、弁護人は、「被告人は、各派遣の際、A子外6名が18歳未満の者であったことを知らなかったから無罪である。」と主張し、被告人も、当公判廷において、弁護人の右主張に沿う供述をしている。

しかしながら、被告人は、コンパニオンクラブを経営する者であるから、コンパニオンを採用するに当たっては、当然適宜の方法により被採用者の年齢を確認する措置を講ずるはずであるが、A子外6名の本件犯行前後の容ぼうについては、A子らの捜査段階での各写真撮影報告書添付の写真及び押収してあるB子、E子の写真を見ると、A子らは、少しおとなっぽく見えたり、子どもっぽく見えたりの差はあるけれども、明らかに18歳以上と、見られるような容ぼう、雰囲気をした子は一人もおらず、その外見から判断して、あるいは同女らが18歳未満であるかもしれないと思うのが通常であると考えられるし、18歳以上のコンパニオン募集という新聞に折り込んだチラシ(平成2年押第33号の3)を見るなどして応募してきた者が自分の年齢を偽って申告することも十分予測されるのに、被告人の当公判廷における供述、A子外6名の証人としての各供述によれば、被告人は、単にA子らの申告した年齢をそのとおり信じたというにとどまり、それ以上に、例えば同女らに対して戸籍謄本、住民票の写し、運転免許証、健康保険証等の呈示を求めるなど、その年齢を確かめるために容易に採り得る措置を全く講じなかったことが認められるから、被告人は、満18歳に満たない可能性のある年少者をよく調査もしないで採用し、コンパニオンとして使用したのであって、このような場合には、被告人にあるいはA子らが18歳未満であるかもしれないという未必の認識があったことを認めることができる。

しかも、被告人は、捜査段階においては、終始一貫して少なくともA子外6名の年齢が18歳未満であったかもしれないことを知っていた旨をいろいろな根拠を挙げて供述しており、その供述の内容は、ごく自然かつ具体的であって、B子の証人としての供述、C子、E子、F子、G子、N子の各検察官調書の記載と重要な部分についてほぼ合致しているし、被告人の捜査段階における供述調書中には、他の関係証拠と対比して被告人の記憶違いと思われる部分、例えば被告人がC子、F子を採用する際に面接したことも被告人が供述するとおりそのまま録取されており、その他被告人の当公判廷における供述からうかがわれる諸般の情況において、被告人の捜査段階における供述については、その任意性を疑わせるような点はなく(なお、被告人は、当公判廷において、検察官が取調べ中被告人に対し、「警察と違うんだから甘く見るなよ。」と怒鳴った旨供述しているが、仮に検察官がそのような不当な言動に及んだとしても、その事だけで検察官に対する被告人の供述が脅迫によるものであると断ずることはできない。)、さらに、その供述の内容(ただし、前記のC子、F子の面接に関する部分を除く。)も、十分信用し得るものであり、これに反する被告人の当公判廷における供述は、信用することができない。また、C子、E子、F子、G子、N子は、同女らの検察官調書中、年齢の認識に関する記載に事実と異なる部分がある旨を証人として供述しているが、その調書には、C子、F子は、採用面接の際、年齢を18歳と「○○」さん(○を指す。)に言った旨、G子は、年齢を18歳と被告人に言った旨、N子は、スナックで被告人と話をしたとき、自分から年齢を言っていない旨、それぞれ記載されており、E子は、採用の面接の際、年齢を17歳と被告人に言った旨記載されているが、証人P子は、当公判廷において、平成元年10月ころ(ちなみに、E子の検察官調書の作成日付は同年10月11日である。)、E子から電話があり、その会話の中で、E子が「面接のときに17歳ですと言ったわよね。」とP子に言ったことを供述しており、E子の右供述記載の信用性を裏付けている。右C子らの検察官調書は、同女らの年齢について被告人が18歳未満であることを知っていたと思う具体的な根拠を挙げて、自然かつ明確に供述しており、その供述の内容は、十分信用し得るものであって、何ら疑問を抱かせるような部分はなく、C子らの証人としての供述中、これに反する部分は、信用することができない。特に本件では外部的な特別の事情として、C子らは、また若年であり、C子、F子、G子、N子は小、中学校の同級生であるが、A子、E子を含めて、コンパニオンとして被告人に採用され、これまで少ない者で数回、多い者で40回ぐらいも被告人の下で宴席に派遣され、被告人とは親しい間柄にあるところ、いずれも検察側の証人として法廷で供述する前に本件弁護人に呼び出されて喫茶店で面接し、弁護人からいろいろ事情を聴かれて記憶どおり証言してほしい旨注意を受け、弁護人の依頼により、被告人に対する処罰を望まず、寛大な取り計らいを求める旨の上申書をそれぞれ当裁判所に提出しているのであって、このような事情から、C子らが被告人のために利益になる証言はしても、不利益になるような証言はしたくないという気持ちを抱くのは人情であるから、それが弁護人の意図に反してC子らの法廷における不自然であいまいな一貫しない供述に少なからず悪影響を及ぼしたことがうかがわれる。

前掲各証拠によれば、A子外6名の年齢について、被告人が少なくとも同女らが18歳未満であるかもしれないという未必の認識を有していたことを認めるに十分であり、弁護人の前記主張は、採用することができない。

(適条)

被告人の判示各所為は、労働基準法119条1号、62条2項、3項、年少者労働基準規則8条44号にそれぞれ該当するので、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法48条2項により各罪所定の罰金を合算した金額の範囲内で、被告人を罰金40万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法181条1項本文により被告人に負担させることとし、主文のとおり判決する。

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